古本屋の100円コーナーで角川文庫の「宋姉妹」:伊藤純、伊藤真を見つけた。中国を支配した華麗なる一族と云うサブタイトルに魅かれたせいもあるが、その半年前に、現代中国論
というA4で160頁ばかりのリポートをまとめたばかりであり、そこでは、中国革命の源流へは簡単にしか触れることが出来なかったので、その辺の情報に興味があったためである。
この本は、1994年7月放送のNHKスペシャル番組国際共同制作「宋姉妹」の製作にタッチした史著者がその番組内容にその後明らかになった事実を盛り込みながら1995年に書き下ろしたもので、私が手に取ったのは、1998年にそれを角川書店が文庫本化した小冊子である。
物語は、1863年海南島の商家に生まれた三姉妹の父宋耀如が9歳で、叔父に連れられ渡米するところから始まる。彼は、そこでキリスト教と出会い大学の神学部にも在籍するが、23歳の時中国に帰国し上海に落ち着き、メソジスト教の牧師として働き、同じ信徒の倪桂珍と結婚。三女三男が生まれる。すなわ、藹齢、慶齢、美齢の三姉妹と子文、子良、子安の三兄弟である。
子供の誕生と共に耀如の関心は、伝道より企業経営に移り、聖書の出版・印刷等で財を成してゆく。この時、幼い姉妹の前に現れて、中国の現状を憂い改革の必要性を熱心に語る男、それが孫文であり、父耀如は、その孫文と意気投合し、ここに孫文と荘家とのつながりが始まる。
荘家の三姉妹は、父の勧めで三人共米国へ留学して中国に戻ってくるが、それからの三姉妹の道は、次第に離れてゆく、長女藹齢は、財閥の孔家に嫁ぎ、次女慶齢は、親族の反対を押し切って歳の差のある孫文と結婚し、三女美齢は蒋介石と結婚する。次女慶齢は、孫文亡き後、共産党と行動を共にし、三女美齢は、夫蒋介石に従って国民党と行動を共にする。長女藹齢は、財閥の中に身を置く。三姉妹の生涯は、そのまま1911年の辛亥革命から1949年の中華人民共和国の誕生に至る中国近代史と重なる。中国共産党は、孫文の思想を受け継ぐ正当な後継者であるあかしと統一戦線の象徴として慶齢を国家副主席として遇するが、実体は形だけのものであった。
しかし、抗日戦争における三姉妹の働きは大きかった。すなわち米国留学体験をベースとした三姉妹の対外情報発信とプロパガンダは、欧米からの政治的支援をもたらし、多くの軍事援助の獲得と米国政治への影響は、やがて日本を太平洋戦争とその敗北に導くことになる。藹齢は、1973年10月ニューヨークにて84歳で亡くなり、慶齢は、1981年中国上海にて88歳で亡くなり、2003年10月三姉妹最後の一人宋美齢は、ニューヨークにて105歳で亡くなる。
1911年の孫文の辛亥革命から今年で110年経つ。今年は、中国共産党創立100年でもある。しかし、この間中国社会は、どれ程文明化したであろうか。再び1911年前後の動乱の時代に入るかの予感がするのは、私だけであろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿