2016年7月30日土曜日

建築大賞を祝う会出席して

 12年程前、一緒にNPO建築設備コミッショニング協会の立上げを行った名古屋大学名誉教授の中原信生先生の建築大賞受賞を祝う会に参加してきた。理学部出身の私には、建築大賞なるものの重みが理解できていなかったが、会場で、大学関係者のスピーチを聞くうちに、これは結構大変なことだと感じた。

 ノーベル賞などでは、特定のテーマでの個人としての独創性と先端性が問われ、その評価できまるが、建築大賞というのは、個人的な研究能力だけでなくその分野の技術や学問の進歩にどれだけ貢献したかが問われる。先生の功績は、「空気調和設備の最適設計・制御と性能検証の理論と実践に関する一連の功績」というもので、いわば一技術者・研究者としての全体としての歴史に対する評価としての受賞であった。

 従って、その受賞の背後には、社会的に有意義な各種プロジェクト、共同研究、教育研修、技術基準の制定等とされに関係した多くの人達のその活動への評価の集積があるということである。
 私は、システムの最適化を通しての省エネルギーと性能検証(コミッショニング)の理論と実践について行動を共にしてきたが、先生は、研究者と教育者、学者と実務者の素質をバランスよく具備された稀な人と感じた。何歳になっても常に前向きで、若い人達とも真摯に議論できる人であった。
 感心させられたのは、論文の執筆から印刷・製本まで、具体的に指導できるように、理屈だけでなく、実際行動ができ、指導できることであった。何か問題があって困ったときには、必ず一緒に考え、具体的な方法論を指示、実行できる点であった。部下としてこれ程、安心できることはない。おかげで、NPOの設立・運営という未知の仕事に取り組むにあたって、安心して思い切り自分の能力を発揮することができた。

 多分、こうしたことは、私だけでなく、その会場に参加された100名の方やその他の関係者すべてが何等かの形で経験され、それが、賞への推薦の流を生み、受賞に連なったということであろう。
 会を終えて、帰りの地下鉄の中で、記念として配布された「空気調和設備の最適設計・制御と性能検証の発展と実践」-その軌跡 という冊子を見ながら、先生の60年に亘る技術者人生とともにそれといくつもの交点をもつ自分の技術者人生を思った。